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岡山県美作市育ちの女子高生カーレーサー、野田樹潤(じゅじゅ・愛称Juju)選手(17)=NODAレーシング所属=が、2024年シーズン、アジア最高峰の全日本スーパーフォーミュラ選手権にチーム「TGMグランプリ」から参戦することが決まった。昨季に下のカテゴリーで結果を残しシートを勝ち取った。日本人女性の参戦は史上初で、過去最年少デビューとなる見通しだ。父は元F1レーサーの野田英樹さん(54)。日本人女性初のF1ドライバーを目指し、いちずに夢を追いかける。

 

今季のスーパーフォーミュラ参戦が決まった野田樹潤選手(和田基宏撮影)

 

昨季、欧州で偉業

 

昨季、仏でのユーロフォーミュラオープン第4戦で優勝したほか、全14戦で戦われた国際F3の「Zinox F2000フォーミュラトロフィー」では5勝を挙げ、史上初の女性年間チャンピオンという偉業を達成した。

 

昨年12月にスーパーフォーミュラの合同テストで3日間192周を走り、決勝レース出場レベルのラップを残して、潜在能力とスキルアップの可能性を評価された。スーパーフォーミュラはF1の1つ下で、F1に必要な「スーパーライセンス」を最短2年で取得可能とされている。

 

TGMの池田和広代表は「テストでは私たちの予想をはるかに上回るパフォーマンス。培ってきたスピード感覚には非凡な才能があり、資格が十分あることを証明してくれた」とのコメントを出した。

 

Zinox F2000フォーミュラトロフィーで年間チャンピオンに輝き、表彰された野田樹潤選手(左から2人目)(©juju.com)

 

高性能マシンでのレース経験値を積むため、欧州での「BOSS GP CHAMPIONSHIP」にも出走する見通しだ。

 

国内の競技ライセンスは原則18歳以上で発給され、普通運転免許が必要。樹潤選手は2月2日の18歳の誕生日に向け、岡山県内の教習所に通っている。「レースで求められることと正反対なので最初は戸惑いもあった」と、笑顔を見せる。

 

Juju Noda
ピットで話し合う野田樹潤選手と監督で父の野田英樹さん(©juju.com)

 

父と二人三脚

 

樹潤さんは3歳の誕生日に姉のときと同様に、父の英樹さんからキッズカートを贈られ、5歳から本格的にカートを始めた。さまざまな習い事をしたが「生まれたときからレースは身近にあった。他のスポーツと違いカートだけは負けたときにすごく悔しく、負けたくないから練習を頑張って勝てたらすごくうれしいという繰り返し」と振り返る。

 

英樹さんが現役引退後に設立したNODAレーシングアカデミーを岡山国際サーキットに移した際、小学4年生だった樹潤さんら家族で美作市に移り住んだ。カートを経て、9歳でフォーミュラカーに。14歳でデンマークに行き、欧州でF4に2年間、16歳でWシリーズに参戦した。

 

競技ライセンスの条件である運転免許取得のため教習する野田樹潤さん=2023年12月27日、岡山県(和田基宏撮影)

 

父について、樹潤さんは「思ったことを行動に移せるところを尊敬する。レーサーとして最初にかっこいいと思ったのも父です」。英樹さんは全部教えるというのではなく自分で正解を見つけるまで待つというやり方だといい、樹潤さんは「父は最高の監督でありコーチ。幼い頃から二人三脚で父がいたからここまで続けてこられた。レースは危険と隣り合わせで心配が多いが、家族が支えてくれている」と信頼を寄せる。

 

一方、英樹さんは「自分と同じ道を歩んでほしいという気持ちは全くない。本人の人生ですから好きなことを楽しくやっていくのを見守る」と語る。

 

 

レース中も自然体

 

昨季は欧州で年間30レース以上に出走。たった5人のファミリーチームで巨大なチームに挑んだ。

 

樹潤さんは「チームも自分も1年目でデータも何もないスタート。3戦目で表彰台、4戦目での優勝は想定外の大成功で自信になった。チームが頑張ってどんどん車が良くなっていったのが大きい。レースごと、練習ごとに成長を実感した」と振り返る。

 

第4戦は5番手を走行していて前の車がクラッシュしたが、冷静に判断できた。無線で父に「いま、トップにいる?」と確かめたのを鮮明に覚えている。「1週間ぐらい前に亡くなったおじいちゃんが支えてくれたように感じた。諦めずにみんなと頑張ってきてよかったといううれしさがこみあげてきた」と話す。

 

「メンタルは他のドライバーと比べても強いと思う。幼い頃から速い車を乗りこなすすべを頭でなく体が覚えてくれた」と自己分析。英樹さんは「センスはあるが努力が伴ってこそ。車を走らせる限界を理解し体で感じて速く走らせている。ふだんと変わらない落ち着いた考え方で、自然体でリラックスしている」と評価する。

 

全日本スーパーフォーミュラ選手権について樹潤さんは、「国内外からトップドライバーが集まるレベルの高いシリーズで、もう少し先だと考えていた。毎レース、いろいろなことを学んで改善し一歩ずつ成長していくのが目標。ベストを尽くして楽しみたい」と抱負。女性として感じていることも多々あるといい、「最終目標はF1で活躍できるドライバー。レギュレーションや車のつくりは男性基準だが、自分の夢を追いかける中で変えていけるようなドライバーになれたら」と熱く語る。

 

筆者:和田基宏(産経新聞)

 

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